<corpse way>



暖かさ。




誰もが求めて、欲して。
冷たく冷え切った体も、心も。


暖かく、満たしてくれる。


その暖かさは、日の光からも得られれば。
また違う形で得ることもできる。




――――………。


真っ白な空間に、ポツリと一人立つ忍。


辺りを見回しても、白い空間のままで。
何もない、見えない、聞こえない。




虚無の空間。



「何だよ……ここ…?;」


在りはしない。見たこともない。
真っ白な空間で、自分の影だけが唯一の黒。


「っ……!!何だ、政宗か」
「Hey、何やってんだよ、佐助。」


自分に手を差し伸べる政宗。
佐助はただ、この何もなかった空間に
政宗がいるということに安堵し。
その手をとろうとする。


「な?!……っ政宗?!;」
「どうした?こいよ、佐助」


足が、縫いつけられたように動かない。
手を懸命に伸ばしても、何かに阻まれるように届かない。


そうこうしていれば、政宗は空間に溶けるように消えた。
佐助は驚き何度も名を呼んだ。
しかし、政宗が戻る気配はまるでない。


背後から新たな気配。




「チカちゃ……っちか…ちゃ!;」
「シケた面してんな。らしくねぇぜ!佐助。」
「政宗が!今そこで!」
「笑えよ、佐助。いつものように、行こうぜ!手、取れ。政宗の野郎もそこにいる」


先程と同様、佐助に手を伸ばす元親。
必死に手を伸ばすが、動けない。
何かが自分を羽交い絞めにし、
引き止めているような。


「ちかちゃ!!行かないでくれよっ!;一人にしないでよ!!」


元親の体も、空間に溶けた。
真っ白な空間に、何も聞こえない。
音も、何もかも遮断するような。

発狂しそうだ。このままここにいれば。
繋ぎとめてくれるものもない。
繋ぎとめてくれる人もいない。


「……誰…か……;」
『貴方の足の下は、柔らかい屍の道』
「あんた…は……?魔王の旦那の、妹の…」
『殺した人、覚えてるかしら?何人の光と、温もりを、奪ったのかを』
「……っや…めろよ……、あんたか?おれを此処に閉じ込めてるのは!;」
『貴方は、人から散々奪っておいて、自分は温もりを得ようというの?』
「出せよ!ここから出せ!!;」
『人は、いつか死ぬの。だから、ここに貴方はいる。私より先に、死んで?』
「なに…言ってんだ?;おれが、死ぬ?;」


真っ白な空間は、お市の笑い声と共に、黒く染まる。
やはり白くなっても黒くなっても、何も見えない。聞こえない。
完全なる。闇の中の闇。


『うふふふ、あははは!……是非もなし』
「……おれは、死んだのか?……黄泉に、行こうとしてるのか?;」
『……行きなさい。あっちに、待っているわよ?屍が、先に旅立った、魂達が。』


指差した方向に、唯一の光が差す。
身動きの取れなかった体が、動くようになった。
光の扉の前に、政宗と元親、そして。


「旦那!!?嘘……だろ?;旦那が、死ぬなんて!!!」
「何をしておる?佐助。お前も、共に逝こうぞ?」
「待たせんなよ!佐助」
「灯は俺が灯してやる。な、それでいいだろ?」
「……旦那……っうわ!!;」


三人の立つ光の扉が、佐助を引き込もうとする。
目を凝らせば、その先には地獄絵図が広がっている。
そんな扉の前に、三人がいる。


「……だ、…いやだ………嫌だ!!;」
『何れは、逝く貴方の道よ?さあ』


市は嬉しそうに笑いながら、その場から姿を消した。
佐助はただ必死に扉に引き込まれないようにもがく。




『佐助!!逝くな!!!』


「……ッえ?;」


背から自分を呼ぶ声がする。
振り返れば、暗闇だが微かに扉が見える。
その前にも、三人が立っていた。
しかし、その顔は必死で。



「帰って来い!!佐助ッ!お主が逝くにはまだ早い!!」
「何やってんだ佐助!死ぬなんて許さねぇぞ!!」
「佐助!!戻れ!!!」


対からの声に挟まれて。
自分を引き止めていたものが何か。
やっと気づいて。

自分が今どういう状況なのかも、理解できた。


だったら、思うことは一つ。


「旦那……「いきたいよ」……っ!!」



佐助が声を上げると、足元から無数の手が伸びてきた。
ズブリと引きずり込まれる感覚。
影潜りの時とはまた違う。
沈めば二度と浮き上がれない気がして。













――――意識は。そこで途切れた。




























































「………け……っさす……!!」
「………ぁ……;」
「佐助!?……っお館様あああぁ!!佐助が!佐助が意識を!;」
「馬鹿者!騒ぐ出ないわ。傷に響く」
「っ……も、申し訳御座いません;」
「伊達と長曾我部にも知らせてやれい。」
「は……はい!!;」
「……たい、しょ……?」
「全く、心配させおって。」
「申し訳……ないです;」


目覚めた場所は、地獄絵図ではなく。
見慣れた天井に、空気。
視界には、涙で顔をぐしゃぐしゃにした幸村と。
今は安堵の表情を浮かべる信玄の顔があった。


「浅井軍に攻め行った時に、お主はわしと幸村を庇い、攻撃を受けた。」
「……魔王の妹さんの、……なんか、地面からはえた手に当たったと思ったら…記憶が…」
「ふむ。厄介よのう」
「まさか、敗北……」
「いや。浅井の軍が一時撤退したのだ。」
「………そう、ですか。」
「お主も、罪作りな奴よのう。わしに心配を掛けさせ、幸村を泣かせ、伊達も長曾我部も動かした。」
「……罪、ですか?;」
「自分に関しては相も変わらず、鈍い奴じゃ」


苦笑し、佐助を見る信玄に、首をかしげる佐助。
そして近づく足音に、二人は襖に視線を向けた。


「Honey!!よかったぜ!;」
「佐助、気分はどうだ?」
「よかったでござる……某のせいで、佐助が逝ってしまったらと……;」
「旦那……大丈夫。おれは、此処にいるから」



『貴方の足の下は、柔らかい屍の道』



「っ………!!;」
「佐助!どうした!!」
「傷か?;痛むか」
「しっかりしろ!!;」



ゾクリ、と背に走った悪寒。
頭の中で反芻し、蝕んでいく。
呼吸が荒くなり、目に涙が浮かぶ。
生きていられた。生きながらえた。
それなのに、死ねと急かすのか?


「……は……ぁ…;旦…那……?;」
「………寒いのか…佐助?」
「…うん……寒い、凄く……血の気が、引くみたいに;」
「そうか………案ずるな。ここには、お館様も、政宗殿も、元親殿もいる。」
「…………うん…;」


抱きしめられた腕の中は、とても暖かくて。
いつからだろう?忍の修行を始めてから。
この、人から与えられる温もりを。
得られなくなっていたのかもしれない。
そして、無意識にそれを欲していたのかもしれない。



人と人が、抱きしめあう温もりが。
この世の中で最も安らぎを。



暖かさを、くれる。




突発的訳わからない文です!(汗 しかも長編にしようとしてしくじりました;! ちくしょう!意味わからなくなってる!; すみません!皆佐助が大好きなんです! 総受けを書きたくなって書いたんですが。 何でシリアスになってるんだろう; 申し訳ないです!精進します!慢心なかれ!;



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