<CaptivAte〜浄化〜>
『この世の妖し全てに裁きを与えたら、必ず戻る』
雪の深々と降り積もる街の一軒。
窓枠に積もった雪の塊は落ち。
そこを埋めるように街の入り口を眺め続ける。
一人の妖し。
「火鉢にお当たりよ。アッシュ」
「ムラサキさん。・・・もう少しだけ」
「風邪をひきますよ、アッシュさん。こちらへ」
「桔梗さんまで・・。じゃあ、お言葉に甘えようかな」
アッシュは窓を名残惜しげに閉めて、火鉢の前に座った。
薄紫の着物は彼にしては珍しくだらしなく着ていて。
まるで傍からは病人にも見えるほど弱弱しい。
パチリと火の粉弾ける音がし、炭が折れた。
「大丈夫さ。あいつは帰ってくるよ。」
「妖しの数もかなり減りました。もうすぐ、春もきます」
「そう、ですね。あのひとは、今。どこにいるんだろう」
毎日、窓からあなたを待つよ。
昔、男色の通う店に売り飛ばされそうなときに、
あなたは助けてくれました。
それからあなたに恋をして、
あなたの帰りを待っています。
これはただの自己満足です。
あなたの想いはわかりません。
オレを愛してくれてはいないかもしれない。
嫌いになるかもしれない。
けれど、オレは、待っています。
ただ、一途に待っています。
もうすぐ、春が来ますね。
それから、春が訪れました。
雪は消えて、桜の蕾が開きそうです。
家の前を箒で掃いていると。
人の気配が近づいてくる。
「ぜえ・・・はっ;」
「っ・・・六さ・・ん」
真っ白の着物で旅立ったのに。
彼は真っ赤な着物を纏って。
ずるりずるりと足を引きずり。
オレの前に帰ってきました。
オレはただ嬉しくて嬉しくて。
彼に駆け寄り抱きしめました。
「っ?!・・・ごほっ!;」
「アッ・・・シュ・・」
ぬるりと、暖かな何かが伝い落ちて、
あなたの手を穢していく。
嗚呼、あなたが帰ってきた。
そのアナタの刃に貫かれて。
オレは葬られるのです。
「お帰り・・・なさ・・・」
最後の妖しは、オレだからだよね?
アナタは誓いを、守ってくれた。
最後の妖しに『最後の裁き』を。
CaptivAteシリーズ、第二段。『誓い』です。
ええ、題名はいわずと知れたあの方の歌(w
これの続きは、日記で公開済です。