<帰ろう>



「………。」


華やかな町並み、人々の賑やかな声。
その中で無言で歩く青年が一人。


「幸村、どうしたのだ?」
「い、いえ……何でもございませぬ」
「やけに大人しいな。」
「そう見えますか?」
「うむ、気になっておるのか?」
「は……はぃ//;」


信玄と共にある茶屋に向かう幸村は、
この賑やかな中で珍しく大人しかった。
二人が何故町にいるのかというと。


「お館様は館でお待ち下されば…」
「なぁに、民の様子を見るのも兼ねてじゃ。」
「某が迎えに行くと申したからでは;」
「あ奴は出来すぎた忍、迎えに行ってやっても罰は当たらぬわ」
「佐助が驚く顔が目に浮かびまする!」
「うむ、見えてきおったぞ。」


そう、二人の目的は。
任務に出て帰ってくる佐助を迎えに来たのだ。
必ず立ち寄る茶屋「花鈴」は、忍隊の中継地点。
佐助が立ち寄らないわけがなく、また
幸村も甘味を買いにくる店でもあるので。
信玄と共に茶屋につくと、椅子に座り佐助を待つ。


「お館様、少々話が」
「………六朗か、精がでるな」
「はっ、此方へ」
「うむ。幸村はそこで待っておれ」
「はい!お館様!!」


忍隊の一人、六郎が信玄を連れて
奥へ入っていくのを見送り。
幸村は出された茶を飲んだ。
勿論、信玄も幸村も普段の服装ではなく、
町人に紛れる着物を着ている。
幸村は普段の髪型ではなく、
長い髪をそのままにしている。
一見すれば女子程の長さ。


幸村が店奥を覗いている間に隣の椅子に荷を置く女性がいた。


「犀(さい)さんはいらっしゃいますか?」
「(綺麗な声でござるなぁ…はて、どこかで聞いたような?)」
「いらっしゃ……っあぁ、「千紗殿」!」
「(犀?…才蔵のことか。こちらの女子は千紗殿と……)」
「うちの旦那様のお団子を用意してもらえますか?」
「くすっ、畏まりました。「いつもの」ですね」
「?……はい、此処で待たせてもらいますねぇ」
「今お茶を持たせます!」


犀(忍隊の一人、才蔵)は幸村にふっと珍しく笑みを見せ
お辞儀をすると、店の中に入っていった。
不思議そうに幸村は女性、千紗を見る。

薄く白い簾のついた笠を椅子に置き見えた素顔。
凛とした、白い肌に目に止まる夕日色の髪。
視線を感じてその方向を見ようとしていた女性は
いつのまにか掴まれていた腕に驚いた。


「なッ……?!」
「すまぬ……無礼を許して下され。だが、一つ問いたいのだ」


――――そなた、佐助か?


女性は目を丸くし暫く青年を観察する。
見慣れた茶の髪、そして顔。
服装は違えど間違えることはなかった。


「変装になってないでしょうが。」
「やはり佐助か!!」
「ってそうだよ!何でここにいるの?!」
「何故って、迎えに来たのでござる」
「お供は?護衛は?!まさか一人でっ?!」
「いや、某がお館様の護衛だ!」
「……もぉ〜!!勘弁してくださいよぉ;」


額をおさえてため息を吐き、椅子に座る。


「才蔵!何でさっき教えないわけ?!」
「犀です、長。俺はご存知かと…」
「っ……帰りは才ぞ…っあ〜!調子狂う!;///」


佐助はまだ少し動揺しているのか。
苛々と才蔵に帰り護衛同行するように告げた。


「………佐助」
「何?旦那……」
「いや、な。今膨れ面をされても、可愛いだけだぞ///」
「……口の横に餡子つけて言わないで下さい。///」


ツイッと指で幸村の口についた餡子をとり、
口に含む。赤面する幸村が普段と違う
雰囲気だったので、佐助もつられて赤面してしまった。


「才蔵!!帯おいてくよ!」
「な、何をするのでござる?!//」
「着替えるんですよ!帰り護衛しにくいでしょ!」
「ならぬ!!そのまま帰れ!//」
「はぁ?!何言ってんの!!///」



――――町中でお主と手を繋いで帰りたい!


「ッ………殺された」
「佐助?;」
「今、おれ死んだよ!!;///」


解きかけた帯紐を結びなおし、
帯を引き取りに来た才蔵に鏡を用意させた。
紅を引きなおし、化粧を施す佐助。
幸村は出てきた信玄に笑われていた。
すっかり沸騰してしまっていたからだ。


「大将、申し訳ございません。荷物になるかもしれませんが、この姿で護衛を―」
「よい、六朗と才蔵がおる。お主は幸村と帰ってまいれ」
「大将?……(気づいてんのかそうでないのか///)」


先に歩く信玄らの姿を見つめていると、
暖かく大きな手が佐助の手を包んだ。
視線を握られた手から幸村へむける。


「……帰るぞ、佐助」
「………はいはい、お供しますよ。幸村様//」


紅蓮と橙を混ぜた空色が、
二人を照らし輝かせていた。



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後書き
リクの「ほのぼの幸佐」です!。
お待たせいたしました!
こんな文でよろしかったでしょうか?
リクエスト有難うございました!
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