<潮騒>



暗闇の崖の上、先端。
漣の音と、潮風と、香り。
そこから見渡す大海原。
水平線はまるで優しい鬼の腕を思わせる。

汚れ仕事をするおれを、気にせず受け入れてくれる腕の中。
想像しただけで胸が締め付けられた。
膝を抱えて、受ける風に髪を弄ばれる。
目の前に広がるその水平線の真ん中には。
大きく煌びやかに輝く、月。

海面に写る月の中に囚われるように。
船の姿があった。
それを見て、佐助は俯いて。
膝を抱える腕の力を強めた。


「………おれ、乙女じゃん。」


ぼつりと呟いた声は、掠れていて。
訳もわからないまま、涙が溢れていた。
すんと鼻を啜り、体を冷やす風を受け続ける。


「サスケ、サスケ!」
「………チサちゃん?」


くいくいと着物をひっぱるのは、一羽の鸚鵡。
首を傾げて、佐助を見つめるチサに、
佐助は苦笑し、羽を擽った。


「ごめんね、何でもないから」
「サスケ、寂シイ?」
「………ううん。大丈夫だから。ごめんね、一人にしてて、ね?」
「サスケ………。」


チサは暫く無言になり、どこかへ飛び去っていった。
佐助は海原に浮かぶ船を見つめて、溜息。


「………寒いよ、元親さん。」


―――――――――――――・・・・。


どのくらいの時が経ったのだろうか。
完全に冷え切った体を、温もりが包み込んだ。
佐助は目を薄ら開け、顔を僅かに上げた。


「…………寒い。」
「あぁ……」
「……………寒いよ、元親さん」
「わかってる、もっとくっつけ。」
「ん……。遅刻して、ごめんね?」
「気にしてねぇよ。だがな、佐助。」


淡い朝日が昇るころに、忍を抱きしめる鬼は。


――――反省してないで、普通に待ち合わせ場所に来てくれ。


と、責任感等強い佐助にお願いしたのであった。



後書き。
佐助はですね、チカちゃんとの約束時間に
遅れてしまったのです。それにショック受けて
待ち合わせ場所に向かわず一人反省会をやっていたわけです。
チカちゃんは律儀?だから、ずっと来るまで待ってました(待ちぼうけ
見かねたチサちゃんが探しに来て、場所を教えたわけです。
これは相互記念品です。遅くなり申し訳ございません!;





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